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宝酒造 田んぼの学校

田んぼの学校レポート(2011年度)

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第3回 <収穫編> 日にち:2011年10月22日(土)/場所:京都府南丹市園部町の田んぼ

始業式

2011年10月22日(土)。いよいよ収穫の日がやってきました。朝の天候は曇りでしたが、空が厚い雲に覆われ、予報では降水確率が高めとあって、ウインドブレイカーを着込んだ生徒さんの姿もありました。
事務局では、雨よけのタープの設営やテント内に雨具干し場を準備するなど、雨が降り出した場合にも即応できる体制を整えて授業に臨みました。

稲刈りたいけんで自然の恵みに感謝

始業式は、矢野雅晴(やのまさはる)校長のあいさつから始まりました。
「みなさんが入学されて5ヶ月が経ちます。5月には泥まみれになって苗を植え、7月には本当に暑い中、手ごわい草に立ち向かいました。そして今日いよいよ収穫の日を迎えました。イネは順調に生長しています。今日は自然の恵みに感謝しながら1株1株丁寧に刈り取ってください。自然かんさつでは、田んぼや周辺の生きものを観察します。田んぼの周りにはいろんな生きものがバランスよく生きていて、豊かな生態系が形成されています。今日の稲刈りと自然かんさつの授業を通して、命の大切さや自然のすばらしさを学んでいただけたらと思います。今日もすばらしい発見、新しい感動を見つけて帰ってください。ちょっと雨が心配なお天気ですが、元気なみなさんのパワーで、この雲をパッと吹き飛ばしてほしいと思います」というお話がありました。

稲刈りを通して学ぶ“命のつながり”

続いて、NPO法人「森の学校」の佐伯剛正(さえきこうせい)さんから今日の授業についてのお話がありました。
「今日は待ちに待った収穫です。体験田んぼでは農薬をほとんど使わないので、育つ量はやや少ないですが、イネはすくすくと健康に育っています。
お米というのは、実は大切な“種”であり、命そのものなんです。4月に芽を出したお米の種を、私たちはみんなで育ててきました。5月には苗を植え、7月には草取りをしました。見に来た方もいらっしゃるかもしれませんが、8月下旬にはイネの花が咲きました。そして今日は稲刈りです。授業のテーマは『イネが実るための命のつながり』です。今回は稲刈りたいけんだけでなく、脱穀たいけんもしていただきます。“千歯こぎ”や“こきばし”という昔ながらの道具を使い、日本人が縄文時代からいろんな工夫をしながらお米を育ててきたことを少しでも体験していただけたらと思います」。
そして、最後に「今回収穫したお米は、11月の『恵み編』でみんなでお餅で食べたり、来年の春には本みりんになりますので、楽しみにしていてください」という言葉で締めくくりました。

そして、「田んぼの講師」をしてくださる地元農家の方々、「自然かんさつの講師」をしてくださるNPO自然観察指導員京都連絡会のみなさん、地元看護師の谷利里美(たにかがさとみ)さんが紹介されました。始業式のあとは、いよいよ授業のスタートです!

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    今日も“新たな感動”を見つけてください、と挨拶する矢野(やの)校長。

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    今日の授業のテーマについて話をするNPO法人 森の学校の佐伯(さえき)さん。

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    今日はどんな楽しいことが待っているかな~。熱心に聞き入る生徒さんたち。

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    農作業の実演指導をしてくださる地元農家の方々。今日もよろしくお願いします!

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    自然かんさつの講師をつとめてくださるNPO自然観察指導員 京都連絡会のみなさん。

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    みんなが1日元気で過ごせるよう見守ってくださる看護師の谷利(たにかが)さん。

稲刈りたいけん

カマを使って、昔ながらの手刈りに挑戦!

始業式の後、2つのグループに分かれ、午前と午後交替で稲刈りたいけんです。
草取り編から3ヶ月ぶりに体験田んぼへ向かうと、大きくりっぱに実った稲穂が重たそうに頭を垂れて、一面を黄金色に染め上げています。「うわー、すごい!」「めっちゃ大きくなってる!」「あぁっ、お米が実ってる!」と自分たちが植えたイネの生長ぶりに、思わず歓声が上ります。
まず、田んぼ講師の谷さんからイネの刈り方と、刈ったイネのしばり方の実演がありました。
カマを握り、もう一方の手でイネの茎を束ねて持ち、茎の根元のほうにカマを押し当てて、地面と水平に引きます。お相撲さんのしきりのように、少し腰を落とした体勢が刈りやすいとのこと。「茎を持つ手は必ず順手で持ってください。逆手だとケガをしやすいから気をつけて」と注意がありました。刈ったイネは、8株ぐらいをひとまとめにしてワラでしばります。これを天日干しするために間伐材の“はざ”に掛けます。これを「はざかけ」といいます。(地域によって様々な呼び名があり、体験田んぼがある南丹市園部町辺りでは「いなきかけ」といいます)

最初に、家族で協力して、イネの長さを測り、1本の穂に何粒実っているかを数えます。植えた時は20センチほどの苗だったのに、すでに100センチを越え、子どもの背丈と変わらないほどに生長していました。「99、100、101……」たくさんの粒が実っているので、モミを数えるのはたいへんです。「105粒もあった!」「こっちは114粒や!」元気な子どもたちの声が飛び交います。
カマを手に持ち、稲刈りが始まると、「わぁ、よう切れるわ!」「スパッと切れるのが快感や!」という声があちらこちらから聞こえてきました。黙々とひたすら刈っているお子さんもいます。一方で「切れへ~ん!」「うーん、結構力がいるわ」と苦戦する生徒さんの姿も。しかし、地元農家の方から「カマを細かく動かさんと、一気にスッと引いたらうまく切れるわ」とアドバイスをいただきコツをつかんだのか、すぐに慣れた様子でザクッ、ザクッと気持ちよさそうに刈っていました。
刈ったイネをしばる作業は、低学年の生徒さんには少々難しそう。子どもの力ではなかなかきつくしばれず、持ち上げた途端、イネがバラバラになる場面も見られました。

次は、脱穀たいけんです。脱穀は、イネに付いたモミを茎からはずす作業で、現在は機械で行なわれていますが、今回は脱穀機が普及する前の伝統的な方法で行ないます。子どもは“千歯こぎ”、大人は“こきばし”を体験しました。
“千歯こぎ”は、櫛状に突き出した鉄の歯の間にイネを挟んで、一気に引っ張るとモミが落ちるという道具で、江戸時代に発明されたものです。それ以前に使われていたのが“こきばし”。これは竹製の大きな箸状の道具で、穂を挟んでモミをこそげ落とします。大人も子どももはじめての道具を上手に使ってモミをしごき取っていきます。子どもたちは、パラパラとモミが落ちるのがおもしろいようで、「楽しい!」「もっとやりたい!」と歓声を上げていました。「こんな簡単な道具でも、おもしろいようにモミが落ちる。昔の人の知恵やね」「今日は少ししかやってないから楽しかったけど、全部これで脱穀すると考えたら……昔の人は大変やったんやろうね~」と感想を聞かせてくれたお父さん、お母さんもいらっしゃいました。
脱穀たいけんの後、飛び散ったモミを1粒1粒拾い集め、大切に扱っている生徒さんの姿に、自分のイネとして育ててきた愛着を感じました。

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    田んぼ講師の谷さんから稲刈りのコツを教わります。

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    1本の穂に何粒ぐらい実っているかな~。家族で力を合わせて数えます。

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    カマを持って稲刈りスタート! 株をかき分けながら刈るのは結構、難しいね。

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    小さかった苗が私の背丈と同じぐらい大きく生長したよ!

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    こんなに刈り取ったよ。自分で刈ったイネを抱えてニッコリ!

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    刈り取ったイネは束ねて間伐材でつくったはざにかけて干します。

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    お父さん、お母さんは竹を割って作った“こきばし”という道具を使って脱穀に挑戦!

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    “千歯こぎ”での脱穀。ぐいっと引くとバラバラッとモミが落ちるのが気持ちいい!

自然かんさつ ―野外―

移り変わる自然の姿に、新たな発見と感動!

今回の自然かんさつのテーマは「田んぼの中の命のつながり」。田んぼの中や田んぼのまわりを歩いて、カエルやバッタなどの生きものや、イネやカヤツリグサなどの植物を観察します。「昨日雨が降りましたが、晴れた日には見られない、雨の後にしか見られない自然の姿というものがあります。それを五感を使って観察しましょう」という挨拶の後、講師から1人1個ずつ配られたルーペ(虫眼鏡)を手に、いざ自然かんさつの小さな旅に出発です。
2~3家族ずつの小さな班に分かれて、講師の自然観察指導員の方やサポーターさんと一緒に、道端の自然を観察しながら体験田んぼへと向かいます。
5月の田植え、7月の草取りの時にも歩いた同じ道ですが、草木の色が鮮やかな緑から、黄や茶に変わりつつあります。「花が終わって、実がなってますね」。講師の方の手で示す方向に目を向けると、夏に淡い黄色の花を咲かせていたアオツヅラフジが、ブドウのような青い実をつけています。ゲンノショウコは種を飛ばした後、果柄(実を支える柄の部分)がめくれあがっていました。「このめくれている様が、お神輿の屋根のよう見えることから、ゲンノショウコには“ミコシグサ”という別名が付けられているんですよ」という講師の説明に熱心に耳を傾ける生徒さんたち。ヤマイモのツルにムカゴができているのを見つけたお母さんが、「ムカゴは塩茹でして食べると美味しい」と聞いて、「一度食べてみたいね~」と子どもとほほえみ合う姿も見られました。

雨の後の田んぼでは、生きものたちも生き生きしています。「あっ、カエルがいた!」と目を輝かせながらカエルを追いかけた男の子は、うまく捕えることができず、「雨の後はカエルも元気やなぁ。いつもより逃げ足が速いわ」と少し悔しそうです。
実ったイネの中に入っていくと、イナゴやバッタなどが驚いて次々と飛び出してきます。刈り取ったあとの田んぼには、前日からの雨で水たまりができています。そこで、タニシやコオイムシを見つけました。コオイムシは昔は田んぼや水路などで普通に見られましたが、今では環境省のレッドリストで「準絶滅危惧種」に入っている貴重な昆虫です。
今回の自然かんさつでは、キリギリス、バッタ、コオロギ、アキアカネなど、“秋の虫”といわれる生きものともたくさん出会いました。「ひげが長いのがキリギリス、短いのがバッタや」とお母さんに教える虫好きくんの姿も。「この辺は夜になったら鳴き声がすごいやろうな。夜に自然観察に来たいわ」とお母さんを困らせる虫好きくん。
春・夏に見かけた白いサギが、今回の自然かんさつではいなくなっていました。「寒い時期が来るから、生きものたちも準備してるんですね」という講師の方の言葉に、確かに冬が近づいていることを感じました。

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    講師の方を先頭に自然かんさつのちいさな旅へ出発! 今日はどんな生きものに会えるかな。

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    いたいた! あそこで何か、もぞもぞ動いてるよ!

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    これ何だろ? 前回草取り編の時に観察した植物に変化が見られます。

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    どんな感触かな? 自然観察は手で触れてみることも大切です。

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    イネを刈り取った後の田んぼに、たくさんの生きものがいるよ!

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    やったー! 捕まえたよ!

自然かんさつ ―室内―

顕微鏡を使って、もっと詳しく観察しよう!

野外での自然かんさつの後は、仁江公民館に戻って授業が続きます。野外で見つけた植物や生きものを、ルーペや顕微鏡を使ってさらに詳しく観察します。
通称“ひっつき虫”といわれるイノコズチの実をルーペで見てびっくり! 植物のはずなのに目のようなものがあり、まさに虫のようです。表面全体を覆っている毛が、動物の毛や私たち人間の衣服や頭髪にくっついて種子を散布するそうです。
前回の自然かんさつの時、川の中で白い花を咲かせていたカナダモを顕微鏡で観察します。「わぁ、細胞まではっきり見えるわ!」「緑のつぶつぶしたのが葉緑体やね」と大人も子どもも夢中になって覗いています。
次に、発芽したイネを観察。「モミの皮を突き破って、芽と根が出てる!」、「根に真っ白な毛が生えて光ってるわ!」という声が上ります。「始業式で『お米は“種”だ』とお話を聞きましたが、こうして観察するとそれが実感できますね」とおっしゃるお母さん。また、「この学校に参加してから、家の近所でも『これ何やろ』と立ち止まって虫や草花を見てることがありますね。歩き慣れた道でも新しい発見があったりするんですよ。私も一緒になって見てるから、子どもの道草を叱れへんねぇ」と笑いながら話してくれたお母さんもいらっしゃいました。

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    野外授業で見つけた植物や生きものを並べて、みんなでふりかえりをします。

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    「何が見えるの?」実体顕微鏡の世界に興味津々。

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    実体顕微鏡で見ると、ただ見ただけではわからない自然の不思議がいっぱい!

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    実体顕微鏡を使うと、繊維の1本1本まで鮮明に観察することができます。

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    ケースの中で動いている虫をルーペで観察します。

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    田んぼの中で見つけたカエルさんとにらめっこ。

日記づくり・ふりかえり

最後は1日のふりかえりの時間です。みんなで目をつぶって、これまでの授業で「びっくりしたこと」を思い返し、指を折って数えました。みなさん、たくさんの発見や驚きがあったようです。その後、思い思いの絵や文章で、今日1日で印象に残ったこと、驚いたこと、感動したことなどを「ふりかえりシート」にかき込んでいきます。そうすることで、思い出をずっと大事にすることができるのですね。
今回は、黄金色に実った稲穂をかいたり、捕まえたいろんな虫を、たくさんの色を使って絵にしていたお子さんもいました。
ふりかえりシートをかいたあとは、班ごとの発表会です。その後、手をあげた子どもたちがみんなの前に出て発表しました。「自分で植えた苗が大きくなっていて嬉しかった」「妹の身長と同じぐらいになっていて驚いた」「カマでザクッと切ったのが気持ちよかった」「千歯こぎが楽しかった。もう1回やりたい」など、それぞれの感想を大きな声で元気に発表。みんなで拍手を送りました。

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    ふりかえりシートに絵と文で、今日1日の思い出をかきとめます。

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    “びっくりしたこと”いくつあるかなー。片方の指じゃ数えきれないよ。

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    みんなの前に出て、大きな声で発表します。

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    完成したふりかえりシートを手に、はい、ポーズ!

終業式

収穫編のしめくくりは終業式です。宝酒造の木下勝仁(きのしたかつひろ)環境広報部長から「みなさん、お疲れさまでした。今年はいくつも大きな台風が来て、みなさんもご心配されていたと思いますが、今朝来てみますと、イネが本当に大きく育っていて良かったなと思っています。今日も天気予報では雨ということでしたが、幸いなことに、ちょうど終わるまでお天気がもってくれました。きっとみなさんの中に強運の方がおられるのだと思います。次回はいよいよ恵み編です。これまでの田植え、草取り、稲刈りのごほうびということで、伏見工場でみなさんの作ったお米をお餅で食べていただくご用意をします。また次回、元気にお会いしましょう」とご挨拶がありました。その後、講師のみなさんに「ありがとうございました!」と全員でお礼を言いました。
まるで野外での授業が終わるのを待っていてくれたかのように降り出した雨。「あぁ、もってくれて本当にありがとう!」と参加者の誰もが思ったことでしょう。きっとみんなの思いが雨の神様に通じたのかもしれませんね。

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    お天気がもってくれて良かった! と挨拶をする木下(きのした)環境広報部長。

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    学生証にハンコをもらって収穫編が終了。これでケロッ田が3つ並んだね!

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    今日、はじめて千歯こきをやって、むかしの人は、それを何本もやっていたことがすごく分かりました。1本やるだけでもとてもたいへんでした。 さいしょはうまくできるかとてもしんぱいでした。でもとてもうまくできました。 5月に田うえをして今日、きたらとてものびていたのがわっと思いました。 一ばん大きいのでは1m10cmありました。

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    いねかりがたのしかった。 さいしょはこわかったけど じょうずにできたし たのしかった。

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    いなほの長さと妹の高さが同じくらいだったのでびっくりしました。お米を作ることはたいへんなことだとおもいました。いねかりも楽しかったです。できたらいねかりをもう1回してみたいです。いろんな花や生き物がいて、春とはちがったしぜんをかんじられました。

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    ①の思い出、こおい虫を最初見つけた時は、ゲンゴロウみたいだった。けんびきょうで見ると目も大きく見えたのでこわかった。②の思い出、水草のいでんしを見たらとてもキラキラしてたのでびっくりしました。水でキラキラしているのかなと思ったけど、ちがっていたからすごいと思いました。③2時間目の時にいねが妹の背ぐらいだったから、半年でこんなに大きくなるんだと思いました。かるときに自分の足がきれるんじゃないかと思った。④ツマグロオオヨバイを見た時はすごいカラフルだなと思いました。それを見た後、スタッフさんがどんな虫を見た?と質問をしてきたので、名前が思い出せなかった時にバナナみたいな虫と言ったら笑われました。おもしろかったです。

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    今日は、田んぼの学校で、田んぼですくすく育ったイネをしゅうかくした。かまで、ザクッ!と切った時が、いちばん楽しかった。そして、一番心に残りました。自然かんさつの時間では、カエル2ひきをつかまえて、緑の葉を入れておきました。すると、カエルの色がかわってびっくりしました。今日は雨だったけど、いろいろなことができて楽しかったです。

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    きょう虫のかんさつをしました。さいしょにいねかりをしました。かまをつかってやりました。いねかりがおわると虫(を)つかまえました。とのさまばったと思(っ)て田んぼの学校にもっていくと土イナゴだと(いう)のでびっくりしました。

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    いねを切ってたばねてかけるのがたのしかったです。いねを切るとき「サクッ」て言う音がしたのでおもしろかったです。カエルやバッタも出てきたのでたのしかったです。

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