大橋MW特別インタビュー 金賞受賞酒と松竹梅の酒づくり
              
              
                
              
              
                
              
- 全国新酒鑑評会で金賞をとる難しさ?
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大橋MW:日本で最も権威のある日本酒の審査会「全国新酒鑑評会」で、私はコロナ禍以前より5年間、最終審査の“決審”に参加させていただきました。その時に感じたことは、「全国の名だたる酒蔵がこれだけ同じ線上に味わいを揃えてくるのか」ということ。たとえるならその一線は、ピアノ線のように繊細なもの。目には見えない菌類を操りながら、その一線に帰着した者だけが金賞を獲れるのです。もちろんわずかな幅はありますが、幾分ヨコに振れたとしても、それが審査員全員にとってポジティブなユニークさに感じるものでなければならない。わかりやすい例でいえば、スケートのショートプログラム。ジャンプ・ステップ・スピンといった技術要素が厳格に決められている中で、質の高さとスタイルをズバリと合わせてくる。それが金賞受賞酒のイメージです。
                 - 松竹梅の酒づくりとは?
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大橋MW:品質の一貫性であり、安定性です。
例えば、香り。これ以上出せばオーバートーンになり、これ以下だとアピールが少なくなるなど、計算しながら狙い通りに持ってくることができている印象です。近年では地球温暖化による高温障害でお米自体が硬くなり、溶けづらくなっています。こんな気象条件下でも米の旨みを生かすには、緻密なまでのデータ分析と補正力が必要です。データ分析の頻度を高く、毎年異なる収穫物の持ち味を反映しながら、一貫性のある品質に仕上げているのです。
緻密なまでのデータ分析というと、なんだかラボで造っているようにも見えますが、最終的な出来栄えを支配するのは人の手です。データ分析と細やかな人の手のかけ方が味の差を生むのです。
今回、金賞という誉れ高いアワードを受賞したということは、宝酒造さんにとっての技術力の裏付けに他なりません。たとえばそれは松竹梅『天』などの紙パック酒に至るまで、金賞受賞酒の技術力が還元されていることをマスマーケットに示したのです。
                 - 金賞受賞酒と大橋MWがコンサルティングされた「然土」。それぞれの良さとは?
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大橋MW:金賞受賞酒は大吟醸ならではの華やかさがありながら、決してそれが出過ぎない。謙遜・謙譲といった日本の美徳が感じられるお酒です。そんな品位を保ちながらも、テクスチャーに継ぎ目がない。要するに口に含んだ時の持続性のことですが、口中で3秒、6秒、9秒、12秒…と流れるように時間が経過していき、後半に品の良い厚みが確実に生まれてきます。それが宝酒造さんの酒造りのスタイルです。
実をいうと、松竹梅『然土』も「継ぎ目のない、洗練されたテクスチャー」「良質なお米」「後半に生まれる厚み」については金賞受賞酒と同じです。ただ、『然土』の方は全体的にもっとトーンが控えめでしっとりしている。“生酛造り”という伝統製法に立ち返ったことにより、香りはさらに控えめながらヨーグルトのような香りが控え、奥行きをもたらすとともに、口中にある旨みのトーンがより膨らんでいます。
                 
              
              
            
              
              

              
              
                
                
                
              
              
              
              