おいしさづくりの基礎知識酒粕に関する基礎知識

酒粕を利用した食品や加工品

酒粕を利用した食品や加工品の代表例は、奈良漬けや魚肉漬けなどです。栄養価の高い醸造副産物として、古くから様々な食品に利用されてきました。

酒粕を利用した伝統的な食品や加工品

酒粕を利用した伝統的な食品や加工品の代表例を紹介します。

名称 説明
奈良漬け うり類の粕漬け。主として、白うりを用い、その他になす・大根・れんこんなどを用いるものもある。大根のこうじ漬けの一種。奈良県の名産品。
石狩鍋 さけをぶつ切りにして、野菜・豆腐・こんにゃくなどとともに酒粕・みそ・しょうゆなどで味付けして煮込んだ鍋料理。北海道石狩地方の郷土料理。
粕汁 酒の粕をすって加えたみそ汁。体を温める効果があるため、冬場に食されることが多い。
粕漬け 肉や魚を酒粕に漬け込んだもの。
甘酒 酒粕を湯で溶いて砂糖などを加え、甘みを付けたもの。

酒粕を利用した創作メニュー

また最近では、健康ブームにより、伝統的なメニューだけでなく、中華や洋風料理、洋菓子にも利用が広がっています。

  • 酒粕ごまだれのバンバンジー
  • 酒粕鶏から揚げ
  • 酒粕の麻婆豆腐
  • 酒粕担担麺
  • 酒粕のレアチーズケーキ
  • 酒粕のバナナジュース
  • 酒粕とさつまいものおやき
  • 酒粕パン

酒粕は、そのものを味わう食材として、あるいは酒粕の持つ風味やうまみを生かした調味料として広く利用されています。

では、この酒粕がどのようなものなのか、その基礎知識を紹介します。

酒粕とは

酒粕は、主に清酒製造の「圧搾」と呼ばれる工程後に残った「搾りかす」のことを指します。 酒粕には、清酒の原料である米やこうじ、酵母由来の炭水化物やたんぱく質、アミノ酸、ペプチド、ビタミンなどの栄養素を豊富に含んでおり、先ほど紹介したように様々な食品に利用されてきました。

酒粕ができるまで

次に、酒粕がどのようにしてできるのかを見ていきましょう。

酒粕は、清酒を製造する工程で、米を原料とし、こうじによる糖化・酵母によるアルコール醗酵を経て得られたもろみを圧搾することで、清酒(液体部)と分離した後に出てくる「搾りかす」(固体部)です。

図

酒粕を特徴づける要素

酒粕の風味は、酒粕を搾った後にできあがる清酒の風味に由来します。酒粕の風味を特徴づける要素を清酒の分類でご説明いたします。
清酒は原料、製造方法等の違いによって分類されます。
その中でも吟醸酒、純米酒、本醸造酒を特定名称酒といい、さらに原料米、製造方法などの諸条件によって、8種類に分類されます。
主な特定名称酒を以下の表に記載します。

特定名称酒の製造条件

   原材料表示  アルコール添加  精米歩合(%) 
特定名称酒 大吟醸 米・米こうじ
醸造アルコール
50以下
吟醸 米・米こうじ
醸造アルコール
60以下
純米 米・米こうじ × 指定なし
本醸造 米・米こうじ
醸造アルコール
70以下

吟醸酒は精米歩合が60%以下の白米を原料として使用し、吟醸造りと呼ばれる低温長期醗酵で造られた清酒で、すっきりとしたなめらかな味わいと、吟醸香と呼ばれる果物のような華やかな香りが特徴です。 吟醸酒から得られる酒粕は、華やかで果実のような香りを有しています。

以下のグラフは、酒粕に含まれる吟醸香の特徴成分 (カプロン酸エチル)について一般的な酒粕と大吟醸の酒粕を比較しています。

※カプロン酸エチル:りんご、バナナ、パインアップルといった果実様の芳香成分

図

このように、酒粕は清酒の特徴を持ち合わせています。
酒粕調味料「酒粕風味 大吟醸〈灘〉」は、大吟醸酒の酒粕を主原料として作られており、大吟醸ならではの華やかな吟醸香を活かし、和・洋菓子の香り付けなどの用途におすすめです。

酒粕に含まれる栄養成分

主原料である米に比べると、酒粕にはこうじや酵母の菌体が含まれているので、様々な栄養成分が豊富に含まれています。そのため、古くからその栄養効果などの調査・研究が行われてきました。

酒粕の栄養成分(日本食品標準成分表2015年版、可食部100g当たりの栄養価)

酒粕とうるち米(炊飯米)を比較すると、酒粕には食物繊維やたんぱく質がとても多く含まれていることが分かります。また、ナイアシンや葉酸などのビタミンも多く含まれています。

栄養成分 酒粕
[17053 調味料 その他 酒かす]
うるち米(炊飯米)
[01088 水稲めし 精白米 うるち米]
エネルギー(kcal) 227 168
水分(g) 51.1 60.0
炭水化物(g) 23.8 37.1
  食物繊維(g) 5.2 0.3
たんぱく質(g) 14.9 2.5
脂質(g) 1.5 0.3
ミネラル ナトリウム(mg) 5 1
カリウム(mg) 28 29
カルシウム(mg) 8 3
マグネシウム(mg) 9 7
リン(mg) 8 34
鉄(mg) 0.8 0.1
亜鉛(mg) 2.3 0.6
銅(mg) 0.39 0.1
ビタミン ビタミンB1(mg) 0.03 0.02
ビタミンB2(mg) 0.26 0.01
ナイアシン(mg) 2 0.2
葉酸(µg) 170 3
パントテン酸(mg) 0.48 0.25
アルコール(g) 8.2 0

酒粕に含まれるアミノ酸(6ヶ月貯蔵した酒粕の分析値)

酒粕に含まれるアミノ酸を下表に示しています。バリエーションに富んだ多種類のアミノ酸を含んでいることからも、うまみやコクを付与する食材・調味料として利用されてきたことがよく分かります。

アミノ酸 含量(%)
リジン塩酸塩 0.367
ヒスチジン塩酸塩 0.087
アルギニン塩酸塩 0.180
アスパラギン酸 0.450
スレオニン 0.174
セリン 0.231
グルタミン酸 0.415
プロリン 0.173
グリシン 0.224
アラニン 0.404
シスチン 0.001
バリン 0.269
メチオニン 0.070
イソロイシン 0.207
ロイシン 0.317
チロシン 0.136
フェニルアラニン 0.182
トリプトファン 0.032
アミノ酸 含量(%)
アラニン 0.404
シスチン 0.001
バリン 0.269
メチオニン 0.070
イソロイシン 0.207
ロイシン 0.317
チロシン 0.136
フェニルアラニン 0.182
トリプトファン 0.032

このように、酒粕には様々な栄養成分、うまみ成分が豊富に含まれているので、食材や調味料として使われてきましたが、近年では生活習慣病予防に関する研究など、健康機能に関する検討が数多く行われています。
「味わいや風味をよくする機能」だけではなく、「健康機能」も兼ね備えた食材・調味料として注目されています。

【参考文献】
「日本食品標準成分表2015年版」,文部科学省
「醸造物の成分」,(財)日本醸造協会
「清酒の製法品質表示基準の概要」,国税庁
「清酒製造技術」,(財)日本醸造協会
渡辺敏郎,「健康と美容に貢献する「酒粕」の成分」,『日本醸造協会誌』 第107巻 第5号, (財)日本醸造協会
小田真規子,「麹と酒粕のおいしい食卓」,日東書院本社