現在、のしといえばのし紙やのし袋の右肩についている紅白の折り飾りを指しますが、これはのし鮑(あわび)が簡略化されたものです。昔からあわびは「百年の生を持つ長寿の貝」として珍重されていました。このあわびをうすく帯状にむき、さらに火熨斗(こての一種)で引きのばして干したものを、紅白の紙で包んで三宝に美しく飾りつけたのがのし鮑です。
保存がきくこと、しかもその長くのした姿が「寿命を伸ばす」「身代をのばす」に通じることから、のし鮑は古くから正月や婚礼の祝い、武家の出陣・帰陣のお祝いなどに欠かすことのできない飾りものとして用いられてきました。この習慣が簡略化されて、今日の“のし”に引きつがれているのです。
このようにお目出たいのしは、弔意にはつけません。また、生ものですから他の海産物を贈る場合もつけないことになっています。 |