おいしさづくりの基礎知識料理用清酒に関する基礎知識

さまざまな「料理酒」

一般に「料理酒」と呼ばれているものには、その種類や製造方法によって、大きく4つに分けられることをご存じでしょうか?
ここでは、さまざまな「料理酒」について説明します。

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上に示すように「料理酒」には、酒類に分類される「料理用清酒」、「飲用清酒」、「合成清酒」と、食品に分類される「醗酵調味料」の4つの種類があります。
続いて、それぞれがどのような原料や製造方法で造られているのか見ていきましょう。

酒類に分類される「清酒」と「合成清酒」の原料と製造方法

まずは、酒類に分類される「清酒」と「合成清酒」の原料と製造方法です。
「料理用清酒」と「飲用清酒」は、どちらも「清酒」として造られるため、製造方法は同様です。

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酒類は、酒税法という法律で、原料や分類が細かく規定されています。
「清酒」は、うるち米、米こうじ、酵母を原料に仕込み、微生物の力で糖化、醗酵、熟成、といった非常に複雑な工程を経て製造されます。天然の原料、微生物の力、酒造りに適した水を使っているので、風味豊かに仕上がります。
一方、「合成清酒」は「清酒」と同様に作った原酒をベースに、酸味料、調味料などの原料を加えて、清酒らしい味わいを組み立てます。「清酒」と比べると、醸造工程で生成する多種多様な風味が少なく、どうしても風味は劣ります。

食品に分類される「醗酵調味料」の原料と製造方法

続いて、醗酵調味料の製造方法を説明します。

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醗酵調味料は、「清酒」を造る段階でもろみに食塩を添加し、酒類として飲めない処置(不可飲処置)をした、酒税の掛からない食品に分類されます。酒類に比べると、酒税が掛かっていないので経済的な価格ではありますが、製造工程で海水と同程度の濃度の食塩を加えているので味は塩辛く、清酒の配合量が少ないため清酒と比べると風味が弱くなっています。
一般にレシピなどで「酒」として表記されているものは、この「醗酵調味料」ではなく、食塩の入っていない「清酒」を指しています。

料理用清酒と飲用清酒の違い

それでは、「清酒」の中の「料理用清酒」と「飲用清酒」の違いを説明します。

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「飲用清酒」すなわち飲んでおいしい「清酒」は、味のバランスやキレのよさが重視されているので、余分な酸味や雑味のない品質が求められています。
しかし、「飲用清酒」に求められていないこれらの成分は、料理をおいしくする成分でもあります。
「料理用清酒」は、料理にコク・うまみを与え生臭みを消す、これらの成分を豊富に含むように工夫して製造されています。
「料理用清酒」と「飲用清酒」とでは、このコクやうまみを与えたり、生臭みを消したりする、料理をおいしくする醸造成分の量に違いがあります。

料理用清酒と飲用清酒の調理効果の違い

実際に料理に使用した際のそれぞれの調理効果はどのような違いがあるのでしょうか?
ここでは、調理効果についてまとめます。

  料理用清酒 飲用清酒
生臭みを消す効果
風味・香りを良くする効果
うまみ・コクを付ける効果
材料を柔らかくする効果

それぞれ料理をおいしくする効果はありますが、「料理用清酒」がより高い調理効果を発揮します。

料理用清酒の成分

料理に使われる清酒ですが、どのような調理効果を期待して使うものなのでしょうか?

清酒は米、米こうじ、水を原料とし、酵母の力を借りて醗酵させることで作られます。
この過程で、さまざまな成分が作られ、清酒の調理効果をもたらしてくれます。

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では、これらの成分が実際にどのような働きを持つのかについて見ていきましょう。

料理用清酒の調理効果

料理用清酒には主に以下の5つの調理効果があります。

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それぞれの調理効果について、料理用清酒に含まれるどのような成分が働いてもたらされるか、みていきましょう。

①素材の生臭みを取り、清酒のよい香りをつける

料理用清酒にはアルコールが含まれますが、アルコールには揮発していく際に不快なにおい成分も一緒に取り除いてくれる効果(共沸効果)があります。
また、料理用清酒に含まれる有機酸は、におい物質と反応し、においのしない物質に変化させます。これらの働きによって、素材の生臭みが抑えられます。
さらに、料理用清酒を醸造する過程で発生する香気成分などにより、不快なにおいをマスキングすることもできます。

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②味をしみこみやすくする

料理用清酒に含まれるアルコールには、材料に浸透していく際に他の調味料やうまみを一緒に浸透しやすくさせる効果があるので、料理用清酒を使用することで、味のしみこみがよくなります。

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③素材をやわらかくする

料理用清酒に含まれるアルコールには、保水性を高めることで、素材をやわらかくし、食感をよくする効果があります。

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④コク・うまみをつける

料理用清酒は、こうじや酵母の働きで醸造される醗酵食品です。米のでんぷんを米こうじの酵素が糖に分解し、その糖を酵母が食べることでアルコールやうまみの源であるミネラルやアミノ酸、有機酸が生み出されます。これらの作用により、料理にコク・うまみをつけます。

⑤塩や酢のカドをとってまろやかにする

塩や酢を使った料理は、そのバランスが悪くなってしまうとカドが立ってしまい、おいしさが損なわれます。
料理用清酒に含まれるアミノ酸は、こうした塩・酢カドを取り、まろやかに仕上げてくれます。

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【参考文献】
河辺 達也「酒類調味料の調理効果について」,『日本醸造協会誌』第102巻第6号, (財)日本醸造協会.
谷 久美雄「「料理用清酒」の研究(第1報)」,『岐阜女子大学紀要』1980年, 岐阜女子大学.