おいしさづくりの基礎知識に関する基礎知識

食品の味

お客様においしいと思っていただくためには、食品のにおい、外観も大切な要素ですが、やはり「どのような味わいか」ということが最も重要です。
では、そうした味わいはどのように形成されるのか、味に関する基礎知識を説明します。

味を構成する成分

そもそも味とは、どのようなものなのでしょうか?
食品の味とは、アミノ酸や有機酸、糖類、核酸などの水溶性の化学物質がもたらすものです。
味の種類には基本五味と呼ばれる、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味があります。
辛味や渋味については、味を構成する要素ではありますが、基本五味には含みません。

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各味覚の概要

  • 甘味 主な呈味成分として、ショ糖や果糖、ブドウ糖などがあります。
  • 塩味 主な呈味成分として、食塩があります。減塩の観点から、塩化カリウムへの代替も行われていますが、えぐ味が問題となっています。
  • 酸味 主な呈味成分として、酢酸(酢)やリンゴ酸(りんご)、クエン酸(柑橘類)、乳酸(ヨーグルト)があります。もともとは食べ物の腐敗の判別に使われてきた味覚です。
  • 苦味 主な呈味成分として、カフェイン、リモネイドなどがあります。 もともとは有害物質の判別に使われてきた味覚です。
  • うま味 主な呈味成分として、グルタミン酸(こんぶなど)、イノシン酸(かつお節、煮干し)、グアニル酸(干ししいたけ、きのこ類)などがあります。グルタミン酸はアミノ酸系、イノシン酸とグアニル酸は核酸系のうま味成分です。
  • 渋味 複合的な感覚とされています。味覚の苦味と、舌に吸着するような感覚(触覚)が合わさって起こるとされています。緑茶のタンニンや渋柿のシブオールなどがあります。
  • 辛味 複合的な感覚とされています。ピリピリ痛い刺激の痛覚と、体温の上昇を伴う温覚が合わさったものと言われています。とうがらしのカプサイシン、しょうがのジンゲロールなどがあります。

味の相互作用

味覚は化学物質によってもたらされるため、口中で混ざることによって互いに影響し合います。これを味の相互作用といい、3つの相互作用が知られています。

味の相乗効果

味の相乗効果は、異なる味覚が合わさることで、味覚が数倍に高まることを言います。
うま味の事例がよく知られており、アミノ酸系と核酸系のうま味成分が合わさると、うま味の強さを数倍に感じます。かつお節とこんぶのあわせだしは、かつお節に含まれるイノシン酸(核酸系)と、こんぶに含まれるグルタミン酸(アミノ酸系)の相乗効果で、うま味を強く感じます。

味の抑制効果

味の抑制効果は、異なる味覚が合わさることで、一方の味覚が弱められることを言います。
例として、コーヒーに砂糖を入れると苦味を弱く感じることが挙げられます。

味の対比効果

味の対比効果は、異なる味覚が合わさることで、一方の味覚が強められることを言います。
例として、すいかを食べるときに塩を振って食べると甘味を強く感じることが挙げられます。

味に関する課題

ここまで味とは何か、という点について述べましたが、こうした要素で構成される「味」について、食品加工の現場ではさまざまな課題があります。
ここからはそうした課題について説明します。

食品添加物などによる異味

食品の保存性を上げたり、機能性をよくしたり、味を調えたりと、食品添加物は今日の食品加工においてなくてはならないものです。
しかし、食品添加物にはマイナス面もあります。そのひとつが、食品添加物特有の異味、異臭を呈することです。

  • 例:軟化剤 肉などをやわらかくし、おいしく食べられるようにするために軟化剤を使います。pH調整剤として、炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウム(重曹)などを配合した場合、アルカリ臭が発生し、おいしさを損なう場合があります。
  • 例:静菌剤 加工食品製造において、微生物による品質劣化を抑制することは極めて重要です。そのため、静菌剤がよく用いられますが、独特のえぐ味、苦味があり、おいしさを損なう場合があります。
  • 例:塩化カリウム 近年、健康志向の高まりから低塩、減塩ニーズが高まり、減塩食が話題です。
    食塩(塩化ナトリウム)の摂取を控えるために、塩化カリウムが用いられます。
    この塩化カリウムは、塩味を呈しますが、苦味が強いため、おいしさを損なう場合があります。
改善のためには

同等の機能を持ち、異味のないもので代替するのが理想ですが、それが困難な場合は、異味をマスキングする素材(うま味成分、香気成分他)を併用するなど、工夫が必要になります。

味質の向上

基本五味に加え、「コクの有無」が評価項目に入ることがあります。このコクは、基本五味を増強させ、厚みや広がりが付与されたものと言われています。
コクを増強するためにさまざまな方法がとられています。例えば、たんぱく質由来のペプチドやかつお節などの呈味成分であるイノシン酸、醸造物に含まれるさまざまなうま味成分などを使用して、食品に自然なコクやうまみを付与しています。

基本五味に含まれる塩味、酸味が、食品中にバランスよく含まれていないと、塩カド・酢カドがあると言われ、好ましくない味つけとされます。
そうした塩カド・酢カドをとって、まろやかにしたいときに有効なのが、本みりんです。本みりんに含まれている数多くの糖類やアミノ酸の効果で、まろやかな味に仕上がります。

味のしみこみ

食材にどれだけ味がしみこんでいるかも、おいしさの指標です。
食材への味のしみこみをよくするためには、まず清酒などに含まれるアルコールを利用するとよいでしょう。
アルコールは浸透性が高く、うま味成分や他の調味料の味を素材の中まで一緒にしみこませます。

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食材に味をしみこませるためには、味つけの順番も非常に重要です。
料理のさしすせそ」という言葉は、誰もが一度は耳にしたことがあると思います。
味つけの基本となる調味料である「砂糖」「塩」「酢」「しょうゆ」「みそ」の頭文字をとったものですが、この「さしすせそ」は、調味料を入れる順番も表していて、この順番に入れると、味のしみこみがよくなります

さ:「砂糖」

砂糖は分子が大きく、甘味が材料に浸透するまで時間がかかるため、最初に入れます。
塩を先に入れてしまうと、塩の分子の方が小さく、先に浸透するので、砂糖が浸透しにくくなってしまいます。

し:「塩」

塩は、先ほど説明したように砂糖よりも後に入れ、砂糖を浸透させてから加えます。塩は浸透圧によって材料の水分を奪う働きがあるため、材料が引き締まってしまい、味がしみこみにくくなります。

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す:「酢」

酢は、その酸味が特徴ですが、早く入れ過ぎると酸味が飛んで風味を損なうので、少し遅めに入れます。

せ:「醤油」

しょうゆもできるだけ最後に入れるようにします。しょうゆの香りは加熱すると飛びやすく、風味が損なわれてしまうからです。料理によっては最初の調味液に含ませ、初めに味をつけることもありますが、しょうゆの風味を生かしたい場合は、この順序で入れるとよいでしょう。

そ:「味噌」

最後に加えるのはみそです。みそもその風味を楽しむものですが、加熱により香りが飛んでしまい、風味が損なわれます。そのため、みそ汁を作るときは、最後火を止めてからみそを溶くという手順になります。

ちなみに、これらの調味料以外にも酒や本みりんが味つけには使われますが、これらはアルコールを含んでいます。
そのため、砂糖よりも早く入れることで味のしみこみがよくなります。また、アルコールを揮発させるためにも最初の方に入れるべきでしょう。

減塩について

今日では、健康志向から低塩、減塩ニーズが高まり、減塩食がよく取り上げられていますが、塩分を減らした減塩食は、どうしても薄味で物足りなく、おいしくないというイメージがあります。
塩分を減らしてもおいしさを維持することが求められていますが、どのようなことに気をつければ、おいしさを維持したまま減塩することが可能でしょうか?

味つけによる減塩

味つけの際に活用することで、減塩効果が期待できる方法を3点紹介します。

うまみの増強による減塩

うまみを増強することで、味にコクや広がりが生じるので、食塩の量を減らしてもおいしく食べることができます。
料理にだしを使い、うまみを利かせるとよいでしょう。

酸味の活用による減塩

酸味をつけることによって味にメリハリが生じ、塩味の薄さを補うことができます。

香辛料の活用による減塩

香辛料は、料理の味を引き締めたり、風味を引き立てたりするので、減塩による薄味の物足りなさを補います。

その他のポイント

調味料由来の塩分を減らす

使用する食塩の量を減らしても、調味料の種類によっては、知らないうちに塩分を余分に使用していることがあります。

  • 例1:酒 料理に使われる酒には、食塩を使用したものと、食塩無添加のものがあることはご存知でしょうか?
    一般に「料理酒」とラベルに書かれて売られているものは、食塩が約2%程度(海水の塩分濃度は約3%)含まれています。そのため、このタイプのお酒を使うと必然的に食塩使用量が多くなってしまいます。
    一方、「清酒」とラベルに書かれている酒は、食塩を一切添加していないため、食塩使用量を抑えることができます。
    減塩のためには、「清酒」と書かれた酒を選んで使用することをおすすめします。
  • 例2:みりん 本みりんの仲間にも、酒と同様に食塩を使用したものと、食塩無添加のものがあります。
    醗酵調味料、もしくはみりんタイプと呼ばれる調味料は、製造工程で食塩を加えています(約2%)。
    これらの調味料を使うと、多くの食塩を使用することになります。
    減塩を意識する際は、食塩の入っていない本みりんがおすすめです。

【参考文献】
伏木 亨 編著,『光琳選書① 食品と味』, 光琳.
古川 秀子 編著 上田 玲子 共著,『続 おいしさを測る 食品開発と官能評価』, 幸書房.
「さしすせその科学」,『みりん研究会講演要旨集(五周年記念誌)』, みりん研究会.
『減塩するならこの一冊 塩分一日6gの健康献立』, 女子栄養大学出版部.