| 第3者意見 |
| 緑字決算報告書の進展と環境活動の広がり |
| 気候ネットワーク |
| 今年の緑字決算報告書の特徴 1998年に独自のスタイルで開始された「緑字決算報告書」も5年目をむかえ宝酒造の環境報告書として定着してきています。外部からも高い評価を受けて、環境改善度を指標化する手法が他の環境報告書にも波及しているのが見受けられます。報告書そのものも第2期になり、あらたな試みが取り入れられ、環境活動を常に前進させるという想いが伝わってきます。 今回の報告書の最も大きな変更点は、重み付けの見直しを行い、その過程で市民の声を反映させたことであり、非常に評価される試みだと考えます。重み付けの結果では、環境負荷項目の中でCO2と容器包装品の項目が特に重視されています。ここでも温暖化防止やごみ問題が重要なものととらえられていることがわかり、今後もこれらの項目についてさらなる対策の強化が求められていると言えるでしょう。投票した市民からの声には協賛と応援のメッセージが多く含まれています。今後もさらなる市民と一緒に報告書を作成すると同時に冷静な判断を仰ぐ工夫に取り組まれることを望みます。 もうひとつの重要な変更点は、環境負荷項目を11項目から14項目に増やしたことです。温室効果ガスの排出が増加している民生(事業)部門にかかわる事務部門の項目を追加したことは、適切なタイミングでの変更だと理解できます。また、再資源化を99%達成した「工場廃棄物」を削除しています。達成したものを継続していくことを前提として削除することも見直しとして適切なことだと言えるでしょう。この工場廃棄物は重み付けが大きかった項目であり、重要な項目に力点を置いて取り組まれてきた成果があらわれたものと理解できます。 昨年から採用した「インターネット連携版」を今年も継承したものであり、紙面が限られた中で多くの情報を含めることは難しい課題ですが、昨年の報告書より4ページ増やし「事務部門の環境負荷削減活動」や「社会貢献活動」について詳しく説明しています。現在重点を置いている取り組みを説明するという意味がよく理解できる紙面構成になっています。「環境マネージメントシステム」のページに関連法規遵守が含まれており、環境に関連する法規を守る取り組みが実施されています。複数の法規の観点から多角的に活動をチェックすることもでき、企業の社会的責任を重視していることもわかります。 環境会計でも工夫がこらされており、環境コストを緑字決算の項目毎に振り分け、費用対効果を出しています。この中から効果の高い活動を重視するという判断は適切だと考えます。しかしながら、1ECOあたりのコストが前年のコストに比較して10倍近くになっているのは、第2期に入り、ECOそのものが小さい数値であるためであっても、時系列的な整合に無理があると考えざるをえません。 全体的には、限られたページ数の中で、簡潔な表現と数値の開示がなされており、客観性が高く情報公開の進んだ報告書であると考えられます。数値と対応するグラフや表もあり、数値を裏付けるためのデータは詳細情報に含まれています。ともすれば自社の取り組みの自賛になりがちな報告書もある中で、読者が客観的に判断できる数値が多く掲載されていることは評価されるべきものでしょう。一方で、数字が多くじっくりと見てみないと理解できないものや関連するデータと照合しなければならないなど、読みやすさ、わかりやすさの点では、妥協せざるをえないことかもしれません。この報告書の冒頭に企業理念や環境活動の基本理念が記載されていることから、それにもとづいた企業経営や環境や社会に貢献する活動であることがよくわかります。欲を言えば、環境と経済が調和した持続可能な社会のビジョンも記載していただきたいことです。 昨年の取り組みの実績 緑字の数値そのものは+31ECOを達成し、前年より2ECOのプラスとなりましたが、目標にしていた前年比+5ECOが達成できませんでした。これは毎年の改善率がもとになっていることを考慮すれば、悪い実績ではないと言えるでしょう。しかしながら、重み付けも変更し、第2期に入り基準年も変更されたことから、これまでの連続性や整合性の観点からは疑問点が残ります。 今年の実績では、生産時のインプットでもアウトプットでも総量、原単位あたりでも電力の使用料を除いて改善されています。品質管理や商品の多様性確保の努力が電力の使用料を増加させるという矛盾を含んだものであっても、新たな対策を講じる必要があるのではないでしょうか。たとえば自然エネルギーの導入という方法も考えられます。さらにグリーン電力制度(自然エネルギーから発電された電力を購入する)もあり、これは環境負荷低減に大きく貢献するものです。また、まだ実現されていないものでありますが、地域単位でのグリーン電力の枠組みづくりへの協力なども不可能な取り組みではありません。 エコプロダクツの取り組みも進んでいることが読み取れます。容器の削減が重要との認識のもとに、はかり売りに取り組んできて、焼酎のはかり売りが前年度比で約10%増加しています。環境負荷を減らすこともでき、消費者も余計な支出をしなくてすむものであり、今後一層進めていただきたい取り組みです。リターナブルびんの普及、そしてエコボトルの開発と取り組まれていて「販売・消費時アウトプット」の指標も向上しています。しかしながら、伸びているとはいえ焼酎のはかり売りは1%にとどまっていたり、リターナブルびんである一升瓶の出荷数量が減少するなど、単独の取り組みでは限界があるのも事実でしょう。この壁を乗り越えるためには、社会そのものを持続可能なものに変えていく必要があります。市民や行政との連携、社会制度の変革などから突破口を開いていただきたいと考えます。 環境活動に熱心な企業でも、環境負荷の原単位あたりの削減を強調する傾向にありますが、宝酒造では、総量の削減も重視されているとのことです。企業の業績を向上させるためには総量の増加が望ましく、総量の削減は矛盾することであり、困難であることは間違いありません。しかしながら、地球の環境容量の視点に立てば、総量での環境負荷低減は避けては通れない課題です。この課題に取り組もうとされていることからも宝酒造の社会的責任を果たすという意欲が伺えます。 社会貢献活動金額はこれまで減り続けてきていましたが、2001年は前年度より増加しています。また内容的にも、自然保護活動に加えて、市民との連携や環境教育的要素もあり、社会的なニーズに応えるものでしょう。中でも「e-mission55」への参加が特筆されるものです。京都議定書をサポートする e-mission55は、温暖化防止を促進する企業として意志表示するものであり、社会的にも極めて重要であると言えます。産業界全体として京都議定書の批准・実施に慎重姿勢を取っている中、日常消費財メーカーとして日本ではじめてこの署名に踏み切った宝酒造の行動は高く評価できます。 環境教育の記述部分は、「社会との対話」のページ内のものであり、位置づけが弱いと感じます。消費者が環境負荷を減らす行動につながったり、環境に熱心な企業をサポートすることにもつながる環境教育を強化することは、社会貢献活動を一層充実させるものに違いありません。詳細資料にも活動内容等を掲載すべきでしょう。 さらなる社会貢献を見据えて 環境の範囲はますますひろがっています。持続可能な社会実現への取り組みの一環として、健康や労働も視野に入れていく必要があります。もちろん宝酒造で広範な取り組みが行われていることは疑いないことですが、この報告書には記載されていません。詳細資料には含めたほうがいい分野ではないでしょうか。 さらには広報の内容や方法なども社会と企業の関係の中で見逃せないことであります。広告が社会にあたえる影響は計り知れないものがあります。インターネット版での最低限の記載と詳細報告の中でしっかり位置づけることが必要と考えます。宝酒造の活動を理解し参加する人を社会全体に広めるためには、社内外の人材育成が必要です。全社員の理解をもう一歩すすめることや環境活動の専門家を養成することも必要ですし、消費者である市民とは情報の交流や対話に留まらない人材育成の場づくりや支援制度もあればいいのでしょう。 はかり売りやリターナブルびんの使用などは、環境負荷は小さいけれども手間のかかる制度です。宝酒造の手間を惜しまない、またライフスタイルの変革までも見据えた取り組みは今後重要さを増すものと思われます。その意味でも一層の環境の範囲の拡大や人的交流・育成が重要です。 最後に、これまでの緑字決算報告書や環境活動の進展を拝見してきた経緯からも、来年、3年後にどのような報告書が発行されるのか楽しみにしています。 |
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