9月も末を迎えた日曜日。朝の冷涼な空気は秋を感じさせますが、天気予報は気温が30度まで上がると言っていました。どうやら残暑厳しい一日になりそうです。今年の夏は雨が多く、イネの生育が心配されていました。しかし今日を迎えてみると、イネはしっかりとこうべを垂れており、黄金色の稲穂を生徒たちも嬉しそうに眺めていました。
感慨深げに稲穂を眺める生徒。自分たちで育てたという思いもあるみたい。
しっかり実ったイネは黄金色に輝いています。
受付までの道のりに今年も栗の実をたくさん見付けました。
お天気と豊かな実りに恵まれて、受付でもみんな笑顔になります。
実りの時を迎え水の抜けた田んぼからは虫の音が聞こえ、足を踏み入れるたび、何かがぴょんぴょん飛び跳ねます。「これはイナゴ。イネの葉を食べます」。自然観察指導員の方が捕まえた虫を掲げると「イナゴ食べられるの、知ってるで!」なんて声も。イナゴはかつてタンパク源として多くの地域で食用にされました。
野外の自然観察では「栽培種」と「自生種」の違いも学びます。同じイネ科の植物でも「自生種」のイヌビエは机に軽く叩きつけただけで、ぽろぽろとタネ(実)が落ちます。一方イネは、その程度でタネ(モミ)が落ちたりしません。人の手で改良された植物と野生植物の明らかな違いに、生徒たちは目を見張っていました。
キツネノマゴを観察。白いスジがあり、虫たちはそこをめがけてやってくるそう。見えるかな?
コオロギのオスとメスの見分け方を教わります。長い卵管があればメスです。
エノコログサの穂を掌に包んで動かすと、まるで生きているみたいに出てきます。
捕まえたのは大きなトノサマガエル。田んぼの水が引いてもカエルはまだいました。
軽く叩くだけでタネを落とすイヌビエ。こうやって子孫を残します。
一方イネのタネ(モミ)は、人の手で収獲するので簡単には落ちなくなっています。
自然観察で出会える生き物をチェック! ケロッ田と田んぼの仲間たち
屋内の自然観察では、生き物や植物のタネの様子を観察します。使ったのは柿のタネ。タネの断面が出るように実を切ると、どのタネにも必ず白い陰が見られます。実はこれが柿の“芽”になる部分なのでした。柿に続いてはイネのタネ(モミ)の構造を調べます。柿とイネにはいろいろ違いがありますが、普段はそんなこと気にせずお米も柿も食べています。柿やイネのタネがひとつの“いのち”のかたまりであることを知り、生徒たちは植物が生きていることをこれまで以上に実感したのでした。
柿のタネの断面を観察。模型のような芽がみえるでしょうか?
柿のタネを拡大するとどんなふうに見えるかな?
比較のためにイネも観察。皮をむいてイネの構造を調べます。
イネの皮はかなりしっかりくっついていて、とてもむきにくそうでした。
川に棲む生き物も観察します。魚は目のつき方などで見分けます。
エビや貝など、魚以外の川の生き物も観察しました。
午後からは稲刈り体験の始まりです。帽子に長靴といった田んぼスタイルもすっかり板についた生徒たちは、はりきって田んぼに向かいます。こわごわ始まるかと思った稲刈りですが、生徒たちは意外にも威勢よく刈り取りはじめました。特に子どもはあっという間にベテラン顔負けの刈りっぷり。ザクザクという小気味よい音が、田んぼのあちこちから聞こえてくるのでした。
刈り取ったイネは、昔の道具を使って脱穀を体験します。現在は機械化された作業も、昔は人の手で地道に行っていたことを学びました。
田んぼ講師の方たちのお手本を、しっかり覚えて田んぼに行くぞ!
まずはイネの成長を確認。約1メートルほどに育っていました。
生徒たちはみんな楽しそうに稲刈りしていきます。
イネをつかむ位置、鎌の構えも完璧! ザクザクとイネを刈っていきます。
「千歯こき」という昔の道具を使って脱穀体験。ちょっと力がいります。
大人は「こき箸」という「千歯こき」よりさらに古い道具を使って脱穀体験しました。
気温がぐんぐん上がって、暑かった午後。それでも稲刈りを終えた生徒たちは、疲れた様子も見せず、振り返りの日記づくりに取り組みます。今日一番思い出に残ったことはどんなことなのでしょうか。思い思いにペンを走らせる姿も、すっかり板についた様子です。
今までと違う視点で自然を見たり、食べることを考えたり、いろんなことを学んだ<収穫編>でした。3回にわたった田んぼでの授業は今回で終了。命を食べ、命をつないでいることへの意識を新たにした一日でした。
今日一日を思い返します。いろんなことを体験しましたね。
和やかに発表。同じ体験をしても、感じることはみんな少しずつ違います。
稲刈りの様子を発表。やはり今日いちばんの思い出です。
豊かに成長した稲穂の絵に、メンバー全員が惜しみない拍手をおくりました。