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宝酒造 田んぼの学校

田んぼの学校レポート(2011年度)

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第2回 <草取り編> 日にち:2011年7月9日(土)/場所:京都府南丹市園部町の田んぼ

始業式

2011年7月9日(土)。「TaKaRa田んぼの学校」の第2回草取り編が開催されました。前日に梅雨が明け、好天に恵まれたこの日は、午前の気温が31℃(水温17℃、湿度62%)、午後には34℃(水温22℃、湿度56%)まで上昇。そんな暑さの中でしたが、生徒のみなさんは、1日元気に授業に参加されました。
今回の野外授業は炎天下での活動になるため、事務局では、補給用の飲み物や、冷たいおしぼり、梅干し、塩飴などを準備し、熱中症対策を万全に整えて臨みました。

秋の豊作を願って草取りを

仁江公民館で行われた始業式は、矢野雅晴(やのまさはる)校長のあいさつからスタートしました。
「早いもので、田植えをしてから2ヶ月経ちました。その間に、イネはたくさんの恵みの雨を受けてスクスク育っています。ただ同時に、草も生長しており、この草が栄養分を奪ってイネの生長を妨げます。秋にたくさんのお米が収穫できるよう、今日はがんばって草を取っていただきたいと思います。前回は5月でしたが、季節も変わり、植物や生きものの種類もどんどん増えています。自然かんさつでは、五感をすべて使って、この季節ならではの植物や生きものを観察し、新しい発見をしていただきたいと思います。
梅雨が明けて、いよいよ夏本番。暑さに負けず、元気に授業を受けていただきたいのですが、くれぐれも熱中症にならないよう。また、ケガや事故にも充分注意してください。充実したすばらしい1日でありますよう願っています」というお話がありました。

田んぼは“小さな地球科学館”

続いて、NPO法人「森の学校」の佐伯剛正(さえきこうせい)さんから、草取りたいけんのテーマ“イネを育てる生きものたち”と、自然かんさつのテーマ“生きるための知恵と工夫”についてのお話がありました。
「体験田んぼの水は、るり渓の奥の山から園部川を通ってきています。田んぼの水には、森の生きものが分解した豊かな栄養分がたくさん含まれていて、イネを大きく育ててくれます。わたしたちがおいしいお米を食べられるのは、そんな栄養豊富な水のおかげなのです。そして、田んぼは“小さな地球科学館”、つまり地球全体の縮図みたいなもの。さまざまな生きものが棲む田んぼから、わたしたち人間は命の恵みであるお米をいただいています。そういう“命のつながり”を今日の授業を通して学んでいただけたらと思います」

さらに、具体的な授業の内容について、佐伯さんのお話は続きます。
「『草取りたいけん』といっても、実際は、抜いた草を田んぼの土の中に埋めていく“草埋め”作業です。加えて、草を抜いたり、埋めるときに土をかき混ぜることで、土に酸素が供給されてイネが元気になるのです。“田打ち車”という農具も使います。
『自然かんさつ』では、今回のテーマである花や昆虫などの生きるための知恵や工夫を中心に学んでいきます。また、田んぼの水の中に棲む生きものも実体顕微鏡を使って観察します。
田んぼのイネは、8月下旬から9月上旬ごろに花を咲かせます。その時期にこちらのほうに来られる機会があれば、ぜひイネの花を見てみてください」

そして、「田んぼの講師」をしてくださる地元農家の谷義治(たによしはる)さん、中西章夫(なかにしあきお)さん、田中重子(たなかしげこ)さん、小寺千鶴(こでらちづる)さん、谷耀子(たにようこ)さんや、「自然かんさつの講師」をしてくださるNPO自然観察指導員京都連絡会のみなさん、地元看護師の小寺孝子(こでらたかこ)さんが紹介され、小寺さんから熱中症対策についてのお話がありました。

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    暑さに負けず、今日1日元気でがんばってください、と始業式で生徒のみなさんにエールを送る矢野(やの)校長。

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    授業を通して“命のつながり”を学んでください、と話すNPO法人 森の学校の佐伯(さえき)さん。

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    今日はどんなことをするのかな~。興味津々といった様子で耳を傾ける生徒さんたち。

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    田んぼ講師をつとめてくださる地元農家の方々。草取りの実演指導をよろしくお願いします!

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    NPO自然観察指導員 京都連絡会のみなさん。今日も自然に関する楽しい話をお願いします!

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    「こまめに水分・塩分の補給を」と熱中症対策について話す、地元看護師の小寺(こでら)さん。

草取りたいけん

草取り=草埋め作戦、がんばるぞ!

始業式の後、2つのグループに分かれて、午前と午後交替で草取りたいけんをしました。 田植えから2ヶ月ぶりに体験田んぼへ向かうと、前回植えたイネが大きく生長して、生徒のみなさんを待っていました。大きくなったイネを見て、「わー、めっちゃ大きくなってる!」「3本ずつ植えたのに増えてる!」とうれしそうな声が田んぼの周りに響きわたります。
7月はイネが大きく育つ大切な時期。イネが生長するとともに、田んぼにはさまざまな草も生えてきます。草はイネの栄養分を奪うだけでなく、イネに日が当たらなくなったり、風通しが悪くなるなど、イネの生長の妨げとなります。そこで草取りをして、イネが育ちやすい環境をつくるのです。

まず、田んぼ講師の谷さんと森の学校のスタッフから草取りについての説明です。
「田んぼに生えている草のうち、セリ、イ、イヌビエ、カヤツリグサの4種類は再生する力が強いので、根っこからしっかり抜いて田んぼの外に出します。この4種類以外の草は、抜いた後、手と足を使って田んぼの土の中に埋めます。こうすると草が栄養分となってイネを育ててくれるのです。この時、イネの周りの土をかき混ぜるようにすると、イネの根から新しい酸素が入ってイネが元気になります」
さらに、谷さんが田んぼの外に出す草について、見本を見せながら詳しく説明します。「4種類の中で一番まぎらわしいのがイヌビエです。イネとよく似ていて、見分けがつきにくいのですが、イヌビエのほうには葉の真ん中に白い筋が入っているのが特徴です」

続いて、自然かんさつ講師の狩野清貴(かりのきよたか)さんから、田んぼの中の生きものについてのお話がありました。
「田んぼの水の中には、さまざまな生きものがいます。田んぼは“小さな地球科学館”なんです。そこには命のつながりがあります。水の中にはプランクトンがいて、それを食べにくるカエルやトンボがいます。また、そのカエルやトンボを食べにくる生きものもいます。そこに生きものたちの“命のピラミッド”ができているのです。そのピラミッドの一番上にいるのは、サギという鳥です。こうした命のピラミッドが形成されているところには、豊かな自然があります。今から田んぼに入ったら、いろんな生きものを見かけると思いますが、そんなことを頭に入れて、草取りをしていただきたいと思います」
その後、農家のみなさんに草の抜き方のお手本を見せてもらいました。

さて、いよいよ田んぼの中に入ります。靴をぬいで身じたくを終えたら、熱中症対策に水分と梅干しを摂り、冷たいおしぼりで首の後ろを冷やしたら草取りのスタート! この日の水温は午前17℃、午後からは22℃。田んぼに足を入れた生徒さんからは、「わー、ひんやりして気持ちええわ」「前回より泥がちょっと固めで歩きやすい」という感想が聞こえてきました。
最初に、イネの長さを測定します。田植えのとき、20センチほどだったイネは、64センチほどになり子どもの腰の高さまでに生長。3本ずつ植えた苗は、分けつして16本ほどに増えていました。
「なかなか抜けへん!」「けっこう力がいるわ!」と、しっかり根をはった草と格闘しながら抜いていく生徒さんたち。「草の根元を握らなあかんで」「指を土の中まで入れたら抜きやすいわ」「いっぺんに抜くのがムリなら小分けして抜いてみぃ」と親子で声をかけあって協力したり、工夫したりしながら進んでいきます。

手作業でひと通り大きな草を抜いた後は、“田打ち車”の登場です。これは明治中期に農家の方が考案した、手押しの草取りマシーンのこと。前方の車輪で草を抜き、後方の車輪でその草を土の中に埋めこんでいくという、1台で2役をこなす優れものです。田んぼ講師の谷さんに使い方のお手本を見せてもらって、田打ち車を手にした子どもたちは、「泥の中で押すのは難しい!」「うまく草が取れへん!」と初めのうちこそ使いこなすのが難しそうでしたが、すぐにコツをつかんで、大人の手を借りることなく楽しそうに押していました。
草取りの合い間には「あっ、カエルいたで!」「アメンボや!」「ザリガニ、ゲット!」田んぼで生きものを見つけた子どもたちの明るい声が飛び交っていました。

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    草は根っこから抜くことが大切です。草の見本を見せながら草取り作業のやり方を説明する谷さん。

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    抜いた後、田んぼの外に出す草は、この4種類。セリ・イ・イヌビエ・カヤツリグサ、見分けがつくかな。

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    イネがグングン大きく育つよう、家族で力を合わせて、草抜きがんばってるよ!

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    しっかり根をはった草を抜くのは、結構力がいります。

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    ほら、こんなでっかい草を抜いたよー!

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    こうして根元のほうを持つと、抜きやすいよ。

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    抜いた草を手にピース! 根から抜けると気持ちいい!

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    初めて挑戦する田打ち車。ひとりでうまく押せるかな。

自然かんさつ ―野外―

たくさんの命に出会う旅、スタート!

今回の自然かんさつのテーマは、「生きるための知恵と工夫」。草取り編は、1年の中でももっともたくさんの生きものの命に出会える季節に開催されます。今回は田んぼの周辺を中心に歩いて、たくさんの植物や生きものを観察します。「自然の不思議さや生きものたちの知恵のすばらしさを五感を使って観察してください」と1人1個ずつ配られたルーペ(虫眼鏡)を手に、2~3家族ずつの小さな班に分かれて、講師やサポーターと一緒に、いざ出発!

田植え編のときと同じ道を歩いていても、生えている草や花はすっかり様変わりしています。「前回ピーピー鳴らしたやつ、こげたみたいに黒くなってる!」「枯れてカサカサになってしもてるな」カラスノエンドウを見つけた子どもが、黒くなったサヤを指で割ると、中から黒いタネが出てきました。「カラスノエンドウのサヤやタネは熟すにつれて、こうして黒くなります。だから、“カラス”という名前が付けられたといわれています」という講師の方の説明を熱心に聞いていた生徒さんたちは、その場でフィールドノートにかき留めていました。

今回の観察では、いろんな種類のクモを数多く見かけました。ナガコガネグモの巣を見つけたとき、講師の方がクモの習性がわかる実験をしてくれました。取り出したのは“音叉(おんさ)”。楽器の調律に使う道具で、一定の周波数で共鳴するように作られています。この音叉を振動させて巣に触れると、クモが反応して近づいてきます。「あっ!クモが近寄ってきた!」「なんで寄ってくんの?」「おもしろーい!もう1回やって!」と大人も子どもも興味深げにクモの行動を注視しています。「これは音叉の振動を獲物がかかったものと勘違いして寄ってきてるんです」という講師の方の説明に、子どもはもちろん、大人からも「クモは獲物が網にかかったことを振動で認識してるんやね」「獲物がつかまったときのクモの動きが素早いな」と驚きや発見の言葉が次々と飛び出しました。「この話はファーブル昆虫記に出てきますよ」と聞いたお母さんは、「昔読んだけど覚えてないので、また読み直してみたくなりました」と目を輝かせていらっしゃいました。

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    見る・聴く・触る・嗅ぐ・味わう――五感を全開にしたかな。自然かんさつの旅へ出発です!

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    2~3家族が1班になり、講師やサポーターさんと一緒に班単位で行動します。

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    ルーペを使って、ヒマワリの花をよーく観察します。

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    どんな感触かな? 自然観察は触ってみることも大切。

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    見て見て、カエルつかまえたよ!

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    何が見えたのかな。講師が見つける生きものには発見がいっぱい。

自然かんさつ ―室内―

顕微鏡でさらに詳しく観察しよう!

野外での自然かんさつの後は公民館へ戻り、野外授業のふりかえりの時間です。講師の方が田んぼの周辺で見つけたヤマトシジミチョウ、クサグモなどの生きものや、ヨウシュヤマゴボウ、スズメノヒエなど、今の時期に見られる特徴のある草花を白布の上にズラリと並べて、みんなでそれを取り囲みます。草取りたいけんで頑張って抜いたイヌビエは、田んぼの周辺にも生えていて、それらが並んでいるのを見つけた生徒さんから「あー、これ田んぼの中にも生えてたわ!」「イヌビエとイネはほんまによう似てるな。見分けが難しいわ」という声が上ります。目の前に並んだ生きものや植物について、生徒さんが質問すると、講師の方から1つ1つわかりやすい解説があります。
イタドリの葉の入った袋を生徒さんが開けると、中から無数の小さな虫が一気に飛び出してきて、「ワァ~ッ!!!」と叫んであわてて袋を閉める場面も。これはイタドリの葉にクモの卵のうが付いていて、袋を開けた拍子にクモの赤ちゃんが飛び出してきたのです。「“クモの子を散らす”というのは、まさにこのこと」という講師の方の言葉に、袋を開けた生徒さんからも笑顔がこぼれました。
次は、各班に分かれて、顕微鏡を使ってさらに詳しく観察します。田んぼの中の水を実体顕微鏡を通して見た生徒さんが、動いている小さな生きものを見つけて「こんなに小さくてもちゃんと手足が動いてるわ!」と声が上ります。「こうして顕微鏡で見ると、小さくても1つの命なんだと実感できますね。この小さな命が田んぼでイネを育ててくれて、私たちの命を支えてくれてるんですね」と感慨深げに語ってくれたお母さんもいらっしゃいました。

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    野外で見つけた草花や虫のお披露目です。

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    講師の方のお話を聴きながら、草花の知恵に驚きの連続。

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    外でつかまえた虫をあらためてじっくり観察します。

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    へぇ~、こんな虫もいたんや。みんなが見つけてきた生きものに興味深々。

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    名前をかいてぼくの名刺を作ります。

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    草花の色を使って、こんなきれいな名刺ができたよ!

日記づくり・ふりかえり

最後はふりかえりの時間です。田んぼの草取りや田打ち車たいけん、自然かんさつなど、今日1日体験したことを思い出して、感動したことや印象に残ったこと、楽しかったことをふりかえりシートに絵や文でかいていきます。これは環境教育の授業としてはとても大切な時間です。体験してからできるだけ早く“ふりかえり”の時間をもつことで、1人1人が自分の意識の底に焼き付けることができるのです。
「前回よりずいぶんイネが伸びていてうれしかった!」「田んぼの草を抜くのは力がいったけど、イネが大きく育つようにがんばりました」「アブラムシとコガネムシがいっぺんにつかまえられて良かった!」「人間の手で草を抜くのは大変だけど、ちょっとの力でどんどん草が抜ける田打ち車はすごい!」など、それぞれの感想を発表。心に残ったことは人それぞれですが、今回は緑色を多用し、紙いっぱい使って絵をかいている生徒さんたちが目を引きました。イネが大きく生長し、田んぼ一面を青々と埋めつくしているのを見たときの感動や喜びが、多くの生徒さんの心に深く刻みこまれているからでしょう。

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    今日1日をふりかえり、楽しかったこと、心に残ったことを、いろんな色を使って絵や言葉でかきとめます。

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    ふりかえりシート完成! がんばって草取りしたことをかきました。田打ち車も楽しかったよ!

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    発表していると楽しい気持ちがよみがえってきて、つい笑顔に。

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    みんなの前で大きな声で発表します。

終業式

草取り編の最後は、終業式でしめくくりました。宝酒造の木下勝仁(きのしたかつひろ)環境広報部長から「みなさん、お疲れさまでした。今日は“暑かったな~”という印象が強かったと思いますが、暑い中で草取りをした今日のがんばりは、おいしいお米という形で必ず秋に成果が出ると思います。次回の収穫編のとき、今日の暑かった1日をふりかえって思い出話に花が咲くことでしょう。みなさんお疲れだと思いますが、家に着くまでが田んぼの学校です。特に、運転される方は充分気をつけて帰ってください」という挨拶がありました。講師のみなさんに「今日1日どうもありがとうございました!」と感謝の拍手を送る子どもたちの姿は、日に焼けてたくましさを増したように感じられました。

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    今日のがんばりは、きっと秋に成果が出ると思います、と挨拶をする木下(きのした)環境広報部長。

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    学生証にケロッ田のハンコを押してもらって、草取り編の1日が終了です。

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    きょうくさとりをしました。 まえよりもずいぶんのびてたのがうれしかったです。カエルはつかめなかったけど つかめるように なったのがうれしかったです。

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    草取りは、葉の部分しかとれなくて、根っこはあまりとれなかった。こうして見ると、生き物はいろんなところにいた。おたまじゃくしがいて、動きがのろいから、だれかにふみつぶされるんじゃないかと思った。

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    田うち車が使えてよかった。草ぬきは大へんだった。

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    ・季節によってなかなかみれない植物を観察できました。
    ・色々な香りや特徴をみつけれて楽しかったです。
    ・また、10月になって色々な植物や生き物を発見したいです。
    ・収かくも楽しみにしています。

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    しょくもつれんさでキリギリスがミノ虫やばったをたべていた。ミノ虫やばったがかわいそうだった。けど それがしぜんの中ではふつうにあるてことがわかった。わたしが虫だったらいやだな。

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    きょうアマガエルを2ひきつかまえました。アマガエルはつかみにくかったです。アマガエルのいるところはくさがたくさんありました。そこにはちょうちょうもいました。しばらくいくとカニがアマガエルをたべていました。しらないうちにおかあさんがカマキリをつかまえていました たのしかったです。

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    クモに 頭をあててふるわせて音さをクモの巣に合てると、音さをえさと思って糸をはいてくるのでおもしろかったです。

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