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2018.03.27

身近でありながら不思議に満ちた“サケ”

日本人の好きな魚ランキングで、マグロとともに最も人気があるのがサケ。食卓にもよくのぼる身近な魚で馴染みが深い。
しかし、案外、その生態は知られていません。その訳は、サケが“淡水→海水→淡水で産卵”という回遊魚であることが原因かもしれません。
もともと淡水魚だったのが、どのようにして海に適応したのでしょう? また、どのようにして産まれた川(母川)に戻ってくるのでしょう?
身近な魚でありながら、知らないことだらけ。この不思議に満ちた“サケ”のことが知りたくなって、札幌市豊平川さけ科学館を訪問し有賀望さんにお話を伺いました。

サケ(シロザケ)の一生

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サケの不思議に入る前に、まずは札幌市内を流れる豊平川のサケ(シロザケ)を例にその一生を見てみましょう。

9月から1月くらいにかけて産卵のために母川である豊平川に帰ってきた親サケは、川底に穴を掘り、産卵します。2カ月くらいで孵化した仔魚は、更に2カ月ほど川底で過ごし、2~3月くらいに浮上して川の中でユスリカ等の餌を食べて成長します。
4~5月頃になると、川を下って海に出て(降海)、その後日本海側を北上し、1年目はオホーツク海で過ごし、北太平洋に移動します。その後、春から秋まではベーリング海で餌を食べ、冬になるとアラスカ湾で越冬する生活を2~3年過ごします。北の海は餌が豊富で、オキアミ等の動物性プランクトンを食べて成長していきます。
3~4歳で成熟すると生まれた川、豊平川(母川)へ戻ってきます。
無事、豊平川に帰り着いたサケは、そこで産卵し、その一生を終えます。

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ざっと、サケの一生を見てきましたが、ここからは有賀さんのサポートを受けながら、サケの不思議の一端に触れてみましょう。

産卵 ~どのようにして産卵するの?~

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産卵は、淡水の川で行われます。テレビなどで、産卵のため川を遡上するサケの群れや、産卵後に死に絶えて横たわる姿などの映像が時々放映されるため、これはイメージしやすいですね。しかし、実際に川の中ではどのようにして産卵がなされているのでしょう?

「産卵は、メスザケが川底に穴を20センチくらい掘って、1回目の産卵を行います。この時、半分以上の卵を産みます。産卵が終わったら、上流から砂利を尾びれを使って優しくかけます。そして、その際にできた上流の2回目の穴に産卵をします。これを計4~5回繰り返し、すべての卵を産卵します。産卵の後に上流から砂利をかけるため全体が小山のようになります。これが、一匹のメスの産卵床になります。」

降海 ~淡水から海水へどのようにして適応するの?~

生き物は、それぞれ様々な戦略で命を子孫に繋いでいきます。サケ(サケ科)の仲間でも、イワナやオショロコマなどは今も一生淡水だけで過ごします。一方で、海に活路を求めたものがいます。今回の主人公であるサケやカラストマスがそうです。しかし、淡水である川と海水の海では、非常に環境が異なります。淡水から塩分濃度の高い海水にはどのように適応したのでしょう?

「サケは淡水から海水へ塩分濃度が変わっても、体内の塩分濃度が変わらないようにする調節機能をエラ(鰓)や腎臓に備えています。過剰な塩分をエラから排出する機能や、腎臓で不足する水分を体内に取り込む機能などにより、海水に適応しています。」

海は川と比べると襲ってくる敵が多いように思います。このままでは生存率が下がって、やがて絶滅してしまいそうです。海に出たことで増えた敵へはどのように適応したのでしょうか?

「確かに、海は川よりも敵が多いです。一方、サケが生息する北方の川は餌が少なく、海の方がずっと多くの餌がいます。豊富な餌を食べることで体が大きくなり、卵を多く産むことができるようになっていきました。例えば、淡水のイワナは500個くらいですが、サケは3000個くらいの卵を産みます。敵は多いが産卵数を増やすことで、繁殖力を高める戦略をとったのです。」

サケのサーモンピンク

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サケの身の色のサーモンピンクは、餌であるエビやアミなどの甲殻類のカロテノイド色素(アスタキサンチなど)に由来する色です。なので、これらを食べないと赤くはなりません。丁度、卵の黄身が餌由来(とうもろこし等)なのと同じですね。

母川回帰 ~なぜ、生まれた川がわかるのか?~

サケが生まれた川に帰ってくることは広く知られています。自分が生まれた川で産卵すれば、次世代が残る確率が上がると考えられるからです。しかし、遠い海からどのようにして産まれた川に戻ってくることができるのでしょうか?

「北太平洋から日本の沿岸までどのように戻ってきているかは、太陽コンパスや磁気コンパスを利用しているのではという説もありますが、まだはっきりとは分かっていません。ただ、沿岸まで来た時に自分が生まれた川を見分けるのは、川の臭いであることは明らかになっています。川ごとに、はえている植物や地質の違いなどから川の水に含まれるアミノ酸の組成が異なり、サケはそれをにおいとして覚えているのです。」

母川回帰率と回帰するサケの年齢

自分が産まれた川に帰って来る確率(母川回帰率)は種によって異なります。サケ(シロザケ)は90%以上と非常に高いですが、カラフトマスでは50%くらいと低いです。この母川回帰率の違いには一長一短があります。母川回帰率が高いと繁殖には有利ですが、母川に大きなダメージを受けるようなことが発生すると卵が全滅するリスクがあります。
一方、サケの多くは3~4歳で成熟して母川に戻ってきますが、中には2歳や5歳以上で戻ってくるものが少数います。母川回帰するサケの年齢に多様性があることで、上記のリスクを回避しています。

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ここで紹介できたサケの不思議は、ほんの一部です。ほかにも、降海直前には海洋生活に適用するために銀白色の形態に変化するなど、まだまだたくさんの不思議が存在します。この記事を読んで、少しでもサケに興味を持って頂けたならば幸いです。

プロフィール

有賀 望さん

東京都生まれ。東京都立大学地理学科卒業、北海道大学大学院農学研究科博士課程中退。学芸員。1999年より札幌市豊平川さけ科学館勤務。札幌市内でサケの自然産卵調査を行いながら、水辺の環境教育に取り組んでいる。2014年に札幌ワイルドサーモンプロジェクトを創設。共同代表。

(札幌ワイルドサーモンプロジェクト 共同代表・有賀 望さん)
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